
一万数千年前の昔、それまで長く西日本の広くを覆っていた亜寒帯の針葉樹林が、徐々に北へ北へと帰り始めたのに、紀伊半島のあまりの高みに帰りそびれたものがいた。シラビソである。
シラビソは林をつくり天川の村に、大峯の山々に残った。その傍にはオオヤマレンゲなどのやはり帰りそびれた美しい花をもつ植物などが何種類もシラビソに従い、全国まれにみる貴重な森をつくってきた。
いま、麓の景色、人の暮らしが少しずつ、そして大きく変化する中で、これまで見たことのないほど多くのシカがこの場で暮らすようになった。
シカも自然の一員。それでも無理のない生息密度の20倍もいれば、森が壊れる! 山が崩れる。これをみんなで何としなければなりません。